次世代の、というか既にその世代に片足突っ込んでいるのだが、スマートフォンなどの電波で最近話題になるのが「5G」だ。これは「5th Generation(第5世代)」の意味だから、特にこの単語そのものに「意味」は読み取れない。この前の「4G」は、今私達がスマートフォンで普通に使っている通信のことだから「その次の世代」というほどの意味だ。当然、5Gの後の世代の未来には「6G」も「7G」も出てくるだろう。
【5Gは4Gとどう変わる?】
5Gは、一言で言って、4Gとなにが違うのかというと「通信速度が劇的に上がる」ということだ。そして、たとえば多くの人がスマートフォンを使う場所などで、通信が遅くなる、などのことがかなり解消される、というのが、大きな効果の違いだ。通信の速度は、大雑把に言って「10倍くらい」速くなる。しかし、実際にはスマートフォンを使ってそんなに早くなった感じがしないことのほうが多い。なぜかというと、スマートフォンの電気信号の処理速度も、基地局の先にあるインターネットそのものの速度も、インターネットのデータをやりとりする「サーバー」の速度も、そんなに速度は速くならないからだ。つまり「5G」で速くなる(可能性を持っている)のは、スマートフォンと基地局の間の電波を使うところだけ、ということだ。
たとえば、渋谷のハチ公前なんかで人が多いときには、5Gなら、通信速度が遅くなることや、繋がりにくくなることがなくなるだろう、ということだ。
【5Gで新たに使われる技術とは?】
その「数十倍の速度」と「電波の混雑を避ける」ために、5Gで使われている技術は、大きく分けると2つある。1つは「今までの電波をより効率よく使う技術」であり、もう1つは「より高い周波数の電波を使う技術」である。「電波の周波数」は、簡単に言えば、テレビなんかのチャンネルのようなものだから、電波の強さとは関係ない。まずは「電波ってなんなのさ?」ということを理解してもらうことから始めないといけない。
【電波とはなんなのか?】
「電波」は「電磁波」の略だ。「電磁波」は「電気と磁気の変化の波」のことだ。「電気の変化(電気そのもの)」があるとそのすぐ近くで「磁気(磁石のちから、ですね)の変化が出る」という現象があって、逆の「磁気の変化の近く」では「電気の変化が現れる」という現象もあって、それが鎖みたいに、「電気 – 磁気 – 電気 – 磁気 – …」と連なって、空間を飛んでいく現象のことだ。これを「電気・磁気波 – 電磁波」というわけだ。これをうまくコントロールすると、線もつながっていないのに、遠隔地どうしで、通信ができる。予め、通信をしたい二箇所でお互いに「電波が来たらYES]「電波が来なかったらNO」などという「取り決め」を用意しておけば、モールス通信みたいな「トン・ツー」で、通信ができる。さらに、これをON/OFF、YES/NOの通信を目にも止まらぬ速さで行えば、1/0のデータを送る・受けることができる。つまりデジタル信号になる。このON/OFFのスピードのことを「周波数」と言うのだが、この周波数の数値が高ければ高いほど、高速で通信が行える。しかし、「周波数」は電磁波の「強さ」とは関係ない、ということは覚えておいたほうがいいだろう。あくまで「電気と磁気の変化のスピード」が「周波数」だ。これが「電磁波(電波)」の基本だ。無線LANなどで現在使われている「周波数」は、2.4GHz(G=10の9乗、Hz=1秒間の変化の数) が多いのだが、この「周波数 – 電気と磁気の変化」は1秒間に2,400,000,000回の変化になる。私達の耳が聞こえる音の周波数は、1秒間に20回~20,000回の変化と言われているから、当然、その電波の周波数がそのまま音になったとしても、私達の耳では聞こえない。とんでもなく速い変化の「電磁波」に、もっと周波数の低い「音」を「電気の変化(ということはその近くで磁気の変化も生じる=電(磁)波になる)として情報にしたもの」を載せて「通信」をする。これが電(磁)波通信の基本だ。そして、この「情報の載せ方」には規則が非常にたくさんあって、それのどれかを使って通信をするのだ。もちろん、電(磁)波を送る側も、受ける側も、同じ周波数を送信したり受信したりできないと、また、同じ規則を使っていないと通信ができない。この規則を「プロトコル」と呼んでいる。
【5Gまでは電(磁)波】
この周波数だが、4Gまでは、数GHzという、無線LANなどで使っている電波と似たような周波数を使う。5Gでもこの周波数を使うが、5Gの場合はこれに加えて、更に10倍周波数の高い数十GHzの電波を使う。繰り返すけれども、「周波数」は高いからといって、電波の強力さを示していない。電気と磁気の変化の速さを示しているに過ぎない。電(磁)波の強さは、別に単位があって、それはモーターなどの電気量と同じ単位を使う。つまり、基本的に、4Gと5Gは「電(磁)波を使う」という意味において、あまり変わらない。
【6G以降は電(磁)波を使うのか?】
ところが、既にある欧州の会社で発表された6Gについての講演会で、その社長が「6Gは電波を使わないかもしれない」という、意味深な発言があったのだが、本当にそうなるかどうかは、まだ一般には明らかになっていない。
「5Gデマ」は、こういった基本について知らない人が「知ったかぶり」をして、広めていることのように、私には思える。まずは「電波ってなに?」について、知るところから始めたらどうだろう?そう思って、このBLOGを書きました。
【大きな数字で驚かせるデマにご注意を】
最近の「5Gデマ」と呼ばれるものは、聞いていると電波の強さとは関係ない「周波数」の数字が高いから、危険だ、みたいなことを言うのだが「電(磁)波ってなんだ?」ということを勉強していれば、数字の大きさに驚くことも、騙されることもない。
※「5Gは危ない」みたいなのは、電波についてちゃんと勉強している人にとっては荒唐無稽なデマ以外には聞こえないものだが、そういう勉強をするチャンスがなかった人にとっては、やはり怖いという感情を持ってしまうものだろう。日本人で大学に行く人は、多い時代でも、同年代の3割、そして、その中の更に約1割が「理系」であって、特に電波とはなんなのか?について、勉強して知っている人は日本の中でも少ない。だから、騙される人が多いのだ。
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