仕事には色々なものがあって、例えば、テレワークを支える「サーバー管理」は昔から多くのことはリモートでできる。少しは出ていかないとできないこともある。物理的にリセットボタン押すとかね。その機会は遥かに減っているけれども。

でも、そのサーバーや途中の通信路、スマホの電池に充電する電気を支える停電があって電源が切れたりしたら困るけど、電力会社の末端の発電所とかだと、リモートワークできる仕事は限られる。ホワイトカラーの部署はできると思うけどね。

外食に頼らざるを得なくて、食事を作るのも、店を開けるのも、その食材を採ったり加工したりするのも、水道なんかのインフラも、ホワイトカラー職場だけじゃないから、簡単にはリモート化できない仕事が、すごく多い。人間が生身の身体を持っている限り、どうしてもリアルなものを扱う仕事はあるんだよ。ロボットやスマホは誰がハードウエア作るの?ってのもあるよね。自分の仕事のことだけ、自分の周辺のことだけしか見えないと、こういう意見になるんだろうなぁ。いや、わからないことはないけれどね。

だから、こういうことを言うときは「こういう前提条件では」という前置きが必要なんだな。こういう話にはね。いやまぁ、ぼくもテレワークは何十年もやってるけど、ぼくの視野からは見えない、いろいろな仕事に、ぼくも支えられてるわけですね。その仕事をしている人には、感謝しかないです。

ぼくは比較的初期のITの仕事をたくさんして来たんだけれども(それこそ、ITなんて単語が無かった時代なんだが)、その中にはダム建設の工事現場に入れるシステムもあった。その時、ダムの建設される底に当たるところで、たくさんの人がいるんです。何しているのか、現場の事務所からはわからない。で、そこの人に聞いた。

「あの人たちは何してるんですか?」

答えはすぐに返ってきた。

「石を拾ってます」

え?と思って、さらに質問したら、こんな答えが返ってきた。

ダムを作るにあたって、その底にあたるところからは、石ころ一つでも除かないといけない。緻密に水が漏れにくいように、水をせき止めるダムになる山をそこに作るとき、石などの粒を揃えて層にするんだが(コンクリートでアーチを作るダムではない形式なので、これをロックフィルダムと言います)その時、山の底に少しでも粒の大きさの違う石があるといけないので、それを取り除いている、とのこと。

世の中には、一人が一日一生懸命働いても、一歩のなん十分のイチも進まない仕事がある、ってことを、その時、目の前に見て、若い頃のコンピュータ屋のぼくは衝撃を受けた。だって、ぼくはこのアタマと指先でプログラムを作り、ハードウエアを作り、コンピュータ屋として一人で心血を注いで、脇目も振らず、仕事してきたんだもの。そんなぼくらや、ぼく自身の心に、この経験は普段は見えないリアルな事実が迫ってきた瞬間だった。目の前に見える人たちの仕事ばかりではない、一見無意味と思われるような小さな仕事を多くの人がする。その仕事に自分の仕事も支えられている。みな相互に関係している。目には見えないけれども。

こんな話を、いま、ITだなんだと、浮かれている人には、していきたいね。悪い話じゃないと思うけどね。