感染症の拡大などの情報は、基本的に数字で追わないとどうしようもない。そのとき、必要な基本は

  1. 感染拡大の数字を全人口の比率で言うこと
  2. 感染拡大を同じ基準で計測した他国・他地域の情報と照らし合わせること
  3. 以上を時系列で見ること
  4. 以上を「これまでの数字」として、それを元に言う「未来の数字」は、あくまで研究者の個人の「意見」として聞くこと。つまり「過去」と「未来」は「分けて」語ること。

ということになる。

4月5日時点での日本における感染拡大は、この「表記の原則」で言うと、こんな感じになる。ウィルス感染は本来指数関数的に増えていくので、その実態をしっかり把握するのは「対数目盛り」で行う、というのは、統計などを取るものの「常識」である。この対数の目盛りに対して、特異点(直線ではなく、異常に上がったり下がったりする点)がある場合は、そこになんらかの問題があることを示す。たとえば「大規模クラスター感染があった」などの場合は、それに当たる。

緑色の線が「日本の全人口に対する感染率」であり、小豆色の線が「日本の全人口に対する感染後の死亡率」である。Y軸は対数目盛(Y軸がひと目降違うと、10倍変わる)だ。大雑把に事を把握するのは、こういうグラフを使う。つまり「今日XX人の感染が確認されました」という情報は、こういったグラフにすると、よく見える。

小豆色の「死亡率」のグラフを見ると、2月末あたりに大きな拡大があり、3月下旬からは、明らかに「直線に近い」グラフとなっている。

日本の場合は、医療現場で「すべての症例について、COVID-19感染を疑い、検査する」という体制にはなっていない。まず熱や咳などの疑わしい症状が出て、その症状によって「感染したかもしれない人」と「感染していないかもしれない人」を振り分け、その上で、PCR検査だけではなく、COVID-19に特徴的な肺の様子であるかどうかをCTやMRI等で把握し、最終的にCOVID-19であるかどうかを決める。PCR検査はよく言われるが、これだけでは「陽性」「偽陽性」「偽陰性」「陰性」の4つの結果しか出ない。その検査結果の確度も50%ほどと言われており、やはり肺への影響があったかどうかの結果と重ね合わせて、PCR検査の結果を参考にする。より正確を期している、と言うことが言えるだろう。日本の医療は、非常に現場が律儀に正確さを求める。そういう意味で安心なものと思って良い。

2020年4月5日現在において、日本での「COVID-19感染者/COVID-19感染による死亡者」は、それぞれ

  1. 感染者 0.0031% (約3万2千人に1人が感染)
  2. 死亡者 0.000064% (約160万人に1人が感染により死亡)

となっている。対して、現状の米国は

  1. 感染者 0.095% (約1千人に1人が感染)
  2. 死亡者 0.0026% (約3万8千人に1人が感染により死亡)

となっている。日本の現状の感染率と、感染後死亡率は米国のそれに比べて、桁が違う少なさである。死亡者に至っては、二桁違う。米国からは「日本の検査が少なすぎる」と批判をされるが、本当のところはどうかわからない。ただし、この数字を見る限りにおいて、日本は世界でも安全な場所である、とは言える。再び断っておくが、ここまでの数字は「過去に発表された公式な数字による」もので、その数字自身が信用できない、という疑惑があり、その疑惑が個々の例ではなく、全体の数字として実証されるのであれば、この分析の元となるデータそのものに、疑いが向けられて当然である。

日本の政府を信用しない、という人は日本では非常に少ない。日本政府の批判をする、という人は、政府転覆を図っているわけではない。転覆を図るのであれば、批判はない。政府の転覆を図る者にとっては、現在の政府は絶対的な悪であるから、すべてを消し去る行動をするはずだ。だから「批判」がある、ということは、あくまで「現在の政府を認めた上でなされる行動」であるからだ。ただ、批判をさんざんしても、政府が批判を受け入れない、という場合は「批判」は収まるが、代わりに「転覆」が図られることになる。しかしながら、現状は日本の国民はそこまでを考えていないし、なによりも日本の政府の、これまでの「実績」から、多くの信頼を日本政府に置いていると考えられる。

今回のCOVID-19についても、日本政府が発表した数字は、信じるに値する、と、私も思っている。実際、この数字を見ると、感染後死亡率の上がり方は、極めてノーマルである、と言える。

ちなみに、日本では毎年50万人の人口減がある。3万人に1人が交通事故で亡くなる。この数字に比べれば「COVID-19禍」は、まだおとなしい、と言える。ネットでは有名な武田邦彦教授も、自身のYuoTubeで様々言っていることは、全て数字に基づくものだ。情緒的な「煽り」はない。

武田教授の言うように「これまでの数字」と「これからの予測」は別ものだ、ということだ。これは、数字を扱う仕事をしたことがない人は、けっこう間違えるところだ。