2020年、1月11日の台湾の政府「中華民国政府」の、総選挙が終わった。結果は、総統に民進党の蔡英文氏が続投となり、一方、議員選挙では民進党は少し議席を減らしたものの、単独過半数を維持。一言で言って、蔡英文氏側の民進党圧勝。これが結果だ。

現在の民進党は、困難なハードルは多々あるものの、「台湾はすでに1つの国であり、大陸中国の政府の見解とは相容れない」という立場。一方の大陸中国の政府は「台湾は現在の大陸中国の政府の地域である」という立場。全く相容れない。

しかし、馬英九・国民党が政権を取っていた時期とその前から「中国」という呼称について、「中華民国政府(台湾)」と「中華人民共和国(大陸)」での合意があった。その合意は、

中華民国政府は「中国」を「中華民国」の略称であるとする。一方、中華人民共和国政府は「中国」を「中華人民共和国」の略称とする。

という「合意」である。この合意のことを「一中各表」と言う。そして、この認識を「九二共識」と言う。要するに、1992年にこれが決められたからだ。とは言うものの、この「共識」は、双方で同じではない、というややこしいものである。「オレはこう考えるけど、お前の考えていることは知らないよ」ということを両方で確認した、という感じである。

日本にいるとわからないが、日本を離れると、隣の韓国、台湾、中国、ロシア、などでも、複雑な歴史が地域ごとにあるのが当たり前だ。日本人の普通の歴史感覚でこれらのことを考えると、理解できないことが多いだろう。特に、台湾や韓国など、古代から、近代-現代に至る歴史で、様々な周囲の列強の支配者が入れ替わり立ち替わり、これらの地域を支配し、そこからの独立運動があり、という「複雑な歴史」は、その一部だけを切り取って「わかったつもり」にはならないことが重要なことになる。

私も台湾、韓国でお仕事をすることが昔から多いが、そのときには、土地の歴史は最低限調べておくのだが、それでもまだわからないことがまだある、と、感じている。歴史は複雑なのだ。

また「台湾」というのは「地域の名前」であって「国名」ではない。これも日本人の多くは知らないことなのではないか。在台湾の中華民国政府は「台湾」という地域を実質支配しているが、「台湾」はあくまで地域の呼称であって、政府の名前は「中華民国」である。中華人民共和国政府は台湾の独立を認めていない(一つの国であると認めていない)ので、当然「台湾」は、地域の名前であって、中華民国とは違う国の政府がそこにある、とは認めていない。つまり、どちらにとっても「台湾」は「国名」では現在ない。

また、日本の政府は現状、中華民国政府を正式な国の政府として認めていないから、東京にある中華民国政府の大使館はない。大使館扱いの施設は「台北駐日経済文化代表処」という名前になっている。東京の港区・白金台にある。日本の政府は、中華人民共和国を正式な国の政府として認めている。

1949年までは、大陸の政府は「中華民国政府」だったが。1949年その年に、中華民国政府は、大陸から中華人民共和国政府に追い出され、台湾に逃れ、そこで「臨時政府」を作った。だから、中華民国政府は現在でも「大陸は中華民国の国土である」という立場である。一方で中華人民共和国は、大陸の支配者は中華人民共和国政府である、という立場だから、相容れないのは当たり前だ。「いつかは、中華民国政府は大陸を取り戻すのだ」というのは「大陸反攻」と言う。しかし、最近はその大陸反攻の象徴の一つであった「台中」にある「中興新村(もと中華民国「台湾省」地域政府の建物が並んでいる)」も人はいない。あまり強くは言わず、むしろ「台北を中心とした台灣という地域は中華民国の地域である」という主張に軸足を持っていっている感じがある。

このように、政治1つでも、かなり複雑なうえ、そこに、大陸中国や日本の歴史が絡む。非常に複雑な歴史を持っているのだが、これは大陸と陸続きの韓国もまた、同じような複雑な歴史がある。

台灣については、まだまだ語ることがあるのだが、一度に入る情報があまりに多いと、読むほうの頭がついていかないことが多いので、今日はこのくらいで自粛することにする。