まずは、日本のIT業界のゼネコン構造の頂点の2社に、大きなトラブルがあった12月初め。

●50とも言われる地方自治体の業務サーバーが吹っ飛んで、一部は未だに復旧していない。(NTTデータ社の公式発表記事)

●神奈川県の住民データが大量流出。(朝日新聞記事)

最初の記事はNTTデータ社、後者は富士通であると、記事中にははっきり書いてある。

前者は、つながりははっきりわかっていないものの、サーバーに使っていたシステムのストレージに使われたSSD(最近は銀行などの基幹系でも、トランザクション速度向上のために、ハードディスクではなく、SSDを使うことが多くなった)のトラブル、ということになっている。つまり、重要な部品のトラブルである。

後者は「下請け会社がやらかした」のはわかるが、そんな下請け会社になぜ重要な仕事を任せたのか?その経緯は?ということが問われる。今後は、元請け会社から下請け会社への仕事の発注にも、元発注者が制限をかけ、監視を強めて来るかもしれない。既に、問題のHDDをオークションサイトで落札した方のインタビューとか、実際にやらかした社員の処遇とか、公のニュースに載りつつある。

とは言うものの、日本のこの種のHDD廃棄業をまじめにやっている会社はいい迷惑である。なにもしていないのに「大丈夫か?」と最初から疑ってかかられてしまう。業務遂行や営業のコストも上がるだろう。ひょっとしたら、会社そのものが成り立たなくなるところも出てくることだろう。また、重要なデータの入っているHDDなどの廃棄は、その組織内で行うこと、などの規定もできることになるだろう。

上記2点、いずれも、ITのインフラ系のトラブルであるが、重要なところにはバックアップシステムが稼働しており、前者のトラブルはかろうじて回避できているところも多いだろう。後者の場合は「情報漏えい」であるから、技術力の問題ではなく、下請け会社の信頼についての問題であり「人間系」がより色濃く関わってくる事案だ。

そして、前者、後者のいずれにも「システム開発コスト」が関わっている。簡単に言えば、「システム開発(そして維持運用)コスト」の削減が関わっているトラブルではないか?と疑われる、巨大な、日本という国の根幹をも揺るがすかもしれない、大きな事故である。

インフラの仕事というのは、ITでも同じだが、「見えないところ」に大きなお金がかかる。その中身を知らない生半可な知識の人間が「上」に立つと、実際には削ってはいけない予算を「見えないから」という理由で削ることがある。会社などの組織ヒエラルキー上、そのヒエラルキーの下にいるエンジニアは「上」の命令がいかに理不尽で多大な損失を被る結果を予測できるとしても、それに逆らって、自らの給与を減らすことはせず、それに従う。

通常は、組織ヒエラルキーの上に位置する役職は、その役職以下の仕事の良いも悪いも全て把握している必要があるが、日本ではそういう実効的な組織を作って運営していることは、大きな組織ほど数少ないのではないか?と、私には見える。

この「日本的な組織」がある限り、おそらく同じことは繰り返し起こり、そして、我々の便利なインフラは1つ1つ、信頼のならないものに変わっていくのではないか。そういう懸念を拭いきれない。