釜山ってこんなところ

日本の現政府と韓国の現政府とはいろいろあるようだが、韓国という前に、朝鮮半島と日本列島は数千年の交流があり、それぞれが「近代国家」となってあれこれ動き出したなんて、長く見てもたかだか数百年のことに過ぎない。このところのいざこざの期間なんて、実際のところ100年もたっていないことでしかない。であれば、このあとの数千年も今と同じ、ということはまずないだろう、というのは予想がつく。

しかし、飛行機から見ても、地形的にも、釜山というところは、米国のサンフランシスコに似ているかもしれない。入り組んだ地形で海があり、都市があり、その背後には山がある。そして、その所々に、人が住んでいる。風光明媚で、海を楽しみ、街歩きも楽しめるだけでなく、山歩きも楽しめる。

日本の対馬が近いので、晴れた日には、釜山港から対馬が見える。釜山から西に40km行くと、そこには「馬山(Masan)」という都市があり、現在は昌原市(Chagwon-si)の一部になっているが、古い港町だ。そこは対馬に一番近い。戦前は、対馬の人たちは、映画を見に、船で馬山にやってきていた、という。地名が「馬山」で、その対岸だから「対馬」という名前がついたようなのだが、いずれも風光明媚なところだ。馬山は、かつての元寇の基地になったところで、 日本統治時代の領事館や憲兵隊の事務所なども残っていて、日本語の説明プレートもある。 近くに鎮海という軍港があり、そこは旧日本海軍の基地でもあった。昔から良港で知られたところなのだ。現在でも日本の巨大企業(ほとんど東証一部上場企業)の工場などが非常に多く、地元の人間の優良就職先として、人気も高い。

最近の釜山は近代化がすごくて、超高層ビルや超高層マンションもどんどん建っている。かつての港町、という風情もまた残っていて、なによりも、地下鉄各駅での表示をはじめ、日本語が非常に多い。乗り換えターミナル駅に近くなると、日本語のアナウンスも聞こえる。街の屋台でも、メニューが日本語で書いてあったりする。当然、日本語が使える人も多く、日本人が行っても、あまり不自由しない。釜山駅前などには「東横イン」なんかもあったりする。大阪や福岡などからの飛行機は往復で1万円前後なので、関西からは東京に出ていくより安い。

日本↔韓国間の観光客激減、というニュースがあり、飛行機も間引きスケジュールになっている、というのはその通りだが、逆に日本人の「釜山好き」は非常に多く、韓国の日本好きの人もいまだにたくさんいる。私が乗った東京→釜山便のエアプサン(LCC)の飛行機は満席に近かった。逆に、釜山好きな日本人は、この「乗りやすくて安い」この期間を利用して、どんどん韓国旅行を楽しんでいる。以前と同じで、人は人情味があり、もちろん、日本人だろうとどこの人間だろうと、別け隔てはない。過ごしやすい土地でもある。

そのため、日本人で韓国好きには釜山好きの人がとても多い。釜山の人も日本には親しみがある。釜山っていうのは、そういうところだ。

とはいえ、日韓政府間の確執の影響がないわけではない。釜山の金海空港のゲート内のセブン・イレブンは閉店していて、これが韓国系のコンビニの「CU」に変わる、ということなどだ。しかしながら、乗った飛行機の日本便は往復ともにほぼ満席状態だし、全体からすると「あまり大きな影響はないなぁ」というのが素直な感想だ。

実は、韓国情報を日本語で掲載している某ニュースサイトの日本語記事は「韓国での日本車の売上落ち込み」を報道しているのに、他の韓国内の韓国語のニュースサイトでは「今回の両政府の確執による日本車の不買運動はほとんど日本車の売上に影響がなかった」という記事を掲載しているなど、よくわからない報道の齟齬もある。実際、韓国内はもともと韓国車が多いのだが、ときどき日本車が走っていて「おい、あれ、ホンダのロゴじゃないの?」なんてのが、良くあったりする。実は韓国の現代自動車(HYUNDAI)の自動車のロゴは、ホンダの「H」のロゴを斜めにつぶしたような格好をしていて、逆に韓国内ではけっこう目立つ。

実際、私がホテルのテレビを見ていると、そのときのニュースの一番は、釜山を直撃した台風の話題で、これは日本の台風15号の被害をもう一度見る思いだった。二番目のニュースは北朝鮮の発射した「飛翔体」が「SLBM( Submarine Launched Ballistic Missile – 潜水艦から発射されるミサイル )」と発表されたことに対するものだ。日本の話題は、ニュースにはほとんど上がっていない。