※以下の文章はフィクションです。
庭の柿の木が大きくなりすぎて、自分の部屋にあまり日差しが入らなくなった。仕方がないので、手持ちののこぎりで硬い柿の木を切り始めたそのとき、胸ポケットに入れているスマートフォンにメールが入った。
「パリの連絡が途絶えました」
その一行だけだったが、なにかとんでもないことが起きていることがわかって、すぐに本部に連絡を入れた。
「何度も呼んでいるんですが、返事がありません。突然、みんないなくなってしまった。そんな感じです」
「先方には、こちらから見られる、街角のリモートカメラがあるだろう。それを見てまた報告をくれ」
「わかりました」
電話は切れたが、10分ほどして、またメールが入った。
「誰もいません。救急車は時々カメラの前を通り過ぎるのですが、それ以外に人の気配がない。。。」
部下の小森くんの声はか細かった。また電話を入れた。
「おい、ニューヨークはどうだ?連絡してみろ。サンパウロもだ。あぁ、ベルリンも、台北もだ」
「もちろん、連絡を入れてみました。台北以外、みんな返事がないです」
世界は沈黙を始めたのか?。人類の歴史は終わろうとしているのかもしれない。そんなSFみたいなことが、頭をよぎった。
「わかった。今から本部に行く。そのまま、他の所とも連絡してみてくれ」
「わかりました」
すぐにクルマを飛ばして、本部に行った。
「小森くん。小森くーん!」
休日の本部のフロアに私の声が響いただ、返事はない。しばらくフロアを歩き回っていると、フロアの隅っこで、小森くんがPCの画面を除きながら「固まって」いた。
「おい、小森くん」
「あ、部長。返事がないんです。。。」
小森の顔は青ざめていた。呆然自失、といった体だ。
「部長、でも部長とお話をした直後、ニューヨークからはメールが入りました。これです。」
小森はPCの画面を指差して、メールの画面を見せた。
「This town will be shutting down, soon.」
この一行だけが書いてあった。
小森くんが続けた。
「NY、パリ、サンフランシスコ、ベルリン、サンパウロ、台北。。。一つずつ、確実に連絡がとれなくなっています。今連絡ができているのは、北京とソウル、台北だけです」。
「わかった。数分ごとに、連絡して、必ず返事をくれ、と言っておけ」
「はい。わかりました」
そして数時間。私はまだ本部にいた。世界はまるでろうそくの火が1つ1つ消えるように、連絡が取れなくなっていった。そして、その日曜日の夜、午前零時。小森がつぶやくように、私に言った。
「周辺の都市すべてと連絡が取れなくなりました。世界は終わったのかもしれません」
「そ、そんな!」
世界には、日本しかなくなった。
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