もう10月終わりになる。「これからはキャッシュレスの少額決済サービスだ!」とばかりに政府も音頭をとったつもりになって、騒いでいるものの、実際に決済に使われているのは現金が8割という統計も見た。実際に動いてみればシステムトラブルも多く、コンビニ大手はそれで失敗。現在動いているキャッシュレスシステムの弱さが浮き彫りになった例は数知れない。消費者から見れば、キャッシュレス決済が乱立し、何がなんだかわからない状況になっている。結局は現金持ってりゃどこでもなんとかなるし、キャッシュレスと言うなら、従来のクレジットカードで十分。混乱が混乱を呼び、リーダーシップを持ってこの混乱を抑え込む力も、もうどこの機関も持っていない。

日本のお金のシステムは、過去明治以来100年以上の長きに渡って培って来たものなので、それを崩すには数年では足りない。日本が経済的に豊かであった時代に、ふんだんにお金をかけて、崩れないシステムを、試行錯誤もやって、多くの実力ある人たちが作ってきたのだ。そのシステムは数カ月で崩れるような軟なものではないのくらい、わかっていて欲しいものだ。そのため、日本人の多くはこのレガシーな通貨システムに万全の信頼を置いている。

新たにできるものの前には、もちろん古いものが横たわっている。世界的な流れで、新しいシステムに移行するのが急務であることを認識した上、強大で強固なレガシーなシステムといかに戦い、崩していくか、ということをしなければならなかったのだが、そこまでの認識と覚悟が、関係者には持てなかったのだろう。

期間限定のポイントのバックくらいで揺るぐようなものでは、それはなかった。それは、もうわかったことだろう。誰の目にも明らかだ。優れた先人の、長い期間の汗と努力の結晶であるレガシーな通貨システムは強い。いや、強大で、ちょっとやそっとで変えられるものではない。

「キャッシュレス」。それは、例えて言えば日本の政府にとって、第三次世界大戦に匹敵するほどのたたかいである。そしてその強固で強大な敵は、今度は、自らの内側にいる。

第二次世界大戦の中の太平洋戦争で、強大な米国を相手に戦ったとき、敵を良く知る、連合艦隊司令長官・山本五十六はその知見から「2年は戦える」と語ったという。

キャッシュレスは、既に敗北の白旗の端っこが見え始めた。この戦いは、あと何年かかるのか?その後、誰が勝利するのか?

昔も今も、同じである。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」。安易に物事を考える思慮の浅さと、大局的なものの見方がないのであれば、この戦には、敗北しかない。

関係者の皆様。時は既に遅い。撤退作戦に入る時期だ。これを間違えると、被害は更に大きくなる。そして撤退作戦は侵攻作戦より難しい。生き残ることを願ってやまない。覚悟して対処してほしい、と思うばかりだ。